avenge
avenge裏話(ストーリー編)
思いついたことをつらつらとまとめておく。
こういうの後で自分で見るとすごい楽しいので。
あまりにも検索性が低いので、後で見出しリンクを整備します。
・舞台
エーミールの元ネタとなったキャラと話している内に、「本名がエーミール」ということがわかり、それなら生まれた地方はドイツっぽい文化圏だなと思い、じゃあ人狼BBSのどっかの村みたいなとこかな、というあたりから世界観が決まった。脳内では時々「ジンロッパ」と呼んでいる地方である(「小説家になろう」によくあるヨーロッパ風の世界観が「ナーロッパ」と俗称されているらしいので)。
私がいた頃の人狼BBSだと、ロールプレイ上、インフラとかのややこしいとこは考慮しないで適当にやっていい感じの世界観だな、と思っていたので、そのイメージを大事にして特定の時代に決めることはせず、ガチ異世界としての構築もせず、このようにした。
なので一日は二十四時間だし、一年は十二ヶ月だし、単位はメートル法。特に途中で文明も進まない。
・ジギタリスとホーソンとセントジョンズワート、ついでに薬に関するアントンの台詞
当初ジギタリスが甘いことを失念していたので(考えてみたら強心配糖体は甘いに決まっている。配糖体だぞ)、アントンのあの台詞になったわけだが、後のシーンに生かせたので結果オーライ。
ホーソン(セイヨウサンザシ)は心疾患に穏やかな効果を持つ薬草で、ジギタリスと併用することも実際あるらしい。……あったらしい? 見てた資料だと現代でもそういう使い方をすることがないこともないらしい? これは疑似科学の範囲なのかどうなのか?
逆にセントジョンズワート(セイヨウオトギリソウ)はジギタリスを含めた何種類かの薬草の成分の代謝酵素を誘導して代謝を促進し、効果を減退させる。
セントジョンズワートはともかくホーソンに言及する予定はなかったが、ジギタリスの資料を集めに図書館行ったら出てきてなるほどなあと思ったし、そもそもの薬が「ジギタリス+花」の構成でないと薬の内容に細工しづらい気がしたので、そういうことにした。
なお、花弁や葉がそのままの形状の薬だったら、間違ってもエーミールが異状を見落とさない。そのため、実際には保存に適さないかもしれないとも思ったが、作中では現代のハーブティーみたいに乾燥・粉砕された状態の植物体であることになっている。……乾燥粉砕された状態であれば、エーミールは偽の薬からジギタリスだけを取り出して使うことができない、というのも理由として大きい。ジギタリスの葉がそのままな薬だったら多分、彼の対処が間に合ってしまう。
また、ジギタリスの強心配糖体はジギトキシン、近縁種ケジギタリス(栽培可能=商業流通に向く)の強心配糖体はジゴキシンで、ジゴキシンの方が排泄半減期が短く中毒を起こしづらいため一般的にケジギタリス(ジゴキシン)の方がよく使われた。が、ジギタリスの方が名が売れているという理由もあり、ここでは敢えてジギタリスを採用した。そのため、薬屋さんが頑張って野生のジギタリスを採集してくれていることになってしまった。ごめんね。
もうひとつ。セントジョンズワート、ドイツ語ではヨハネ草と言うらしいし、本作のベースの世界観は上記の通りだいぶドイツ寄りなのだが、こちらも「その方が名が売れているから」という理由でセントジョンズワートと記載した。
ホーソンは単体での味が薄く、ジギタリスが甘く、セントジョンズワートはやや苦いらしい。そのため、エーファは味で薬の内容が違うことに気づくことができた。
・薬に細工
思ったより作中でエーファの状態が悪くならなかったものだから、殺すアクションをとらなくてはいけなくなってしまった。何であまり悪くならなかったのかが(私に)わかったのは、もう後半も終わろうという頃である。人狼だったことには気づいてたんだけどそんな綱渡りをしてたとは知らなかった。
ジルヴェスターにはエーファを殺しうる動機があったため黒幕をここに振ったものの、実行役を誰にやってもらうかだいぶ悩んだ。医者が順当か、と思ったがアントンに言うことを聞かせる手段がなくて(この思考経路が後述のジルヴェスター-アントン人狼説に繋がる)、アントンを断念。医師から処方箋をもらって商人から薬を受けとる、という医薬分業形態を考え付いたので商人ケヴィンを実行犯とした。
……ただし!
生薬は有効成分の抽出量に時期やら植物の部位やらによって差があったりして、決して扱いやすいものではない。正規の流通に乗るからにはそれなりに一定品質のものであるはずだが、その条件を満たすのは難しい(しかもジギタリスを採用してるので栽培種ですらなく、その点でも一定品質を保ちにくい)。のでこういう売り方をするのは本来、おかしい。もっと成分抽出の技術が発達しても、薬屋によって全然内容物が違うようなのが普通だったはず(出典は『新薬の狩人たち』)。
なので、アントンが雑だというのが理由でなければ、ここは創作上の都合です。
・アントンが処方した薬
架空の薬。リアルな飲み薬で、ほぼ肺炎の人間をほとんど沈静させてほっとけるようなものがあるわけあるか。
でもこの町、医療関係者がアントンしかいないのでそういう人をつけておけないし、ヤンとの約束上、それ以外の人を代わりに向かわせるのもまずいので、ヤンの存在を知っているジルヴェスターがごり押しした。そのためアントンも本気を出さざるを得ず、普段使わないような薬を出してきた(件のメモはその連絡であるがうまく作中に出てこなかった)(ルドルフに喋らせるとこじれるというジルヴェスターの判断があった)
薬自体は、アントンの実家か師匠筋の秘伝の薬なので詳細不明。狼の肉とかが入ってる可能性もある(アントン的には共食いだなぁ)(ニホンオオカミの肉を浸けた秘薬とかかつて実在してたので、あるかも、くらいの話)
・人狼
いや……出ないはずだったんだけど……。
途中で突如「ジルヴェスターは人狼なのでは?」という解釈が脳内から降ってきて、泡を食って色々検討した結果「いや、それはない」という結論に達し(主な理由:ジルヴェスターが単騎でなかった場合はほぼエーミールが最終局面まで生き残れない、あとその話はジルヴェスターが孤立しないので何となく美味しくない)、でもそのとき仲間陣営として想定したアントンがあまりにも本当に人狼っぽかったので、人狼だったことになった。おかげで終盤が盛り上がる方向にもっていけたのでよかったと思っている。明るいグロ。
なお作中のあのおうちでのお食事シーンは本当に書いているが、明るいグロどころでは済まなかったので、没ではないが表には出さないことになった。
仲間狼の内訳は、何となくこうかなーと思ってたところをそのまま採用。
・仮に長期人狼のレギュレーションだとすると
占い師:ウルリーケ
霊能者:ケヴィン
狩人:エーミール
聖痕者:ヤン
狼:アントン、フランツ、エーファ
狂人(この場合は狼の味方をするとは限らないが混乱を招く):ユーディット?
という感じ。
狂人:いやこれ結果から見るとどう見てもジルヴェスター。ヤンを村側決め打って吊る挙動をしているので、明らかに狼側に利する行動を取っている。
なおエピローグのエーファが狼の姿なのは、この場合ケヴィンの目には人狼と判定されるから。
・鉱山
何らかのファンタジー鉱物を掘っていた。そのため、鉱害はないことになった。
作中の「薄紫の錆」は非実在であり、鉱山で掘っているのが非実在鉱物であることの表現。
銅の化合物であるアズライト(藍銅鉱)はかろうじて「紫色」と表現しうる可能性があるが、どう考えても「薄紫」ではないと思う。
・翼ある蛇族(というか蛇人族)
たぶんやや北の方にある、すごい火山の麓の温泉地帯な沼地に住んでいる。
同一種族だが実は人外の姿が二通りあって、翼ある蛇タイプのひとと、下半身が蛇のタイプのひとに分かれる。ヤンは前者。
彼らは元来火山の麓に住む種族のため、不定期かつ継続的に有毒ガスに晒されていて毒耐性があり、その発展系としてアルコールにも強い。
温かいところの種族ではあるが、翼があるひとたちには高空を飛行する能力があり、それゆえ殊更に寒さに弱いわけではない。ただ翼を失うと、翼が万全の場合よりも寒さに弱くなるかもしれない。飛行するために必要だから、翼に付随する魔術的効果により補足されている、という耐寒能力なわけだ。つまり、翼のないタイプの人たちはちょっと寒さが苦手め。
成人するタイミングは十五歳前後で、発情期に一部の鱗の下の皮膚に婚姻色が出るようになると成人。ただし実は婚姻色が出てすぐの年齢の頃は奇形を生みやすく、まだ婚姻することが望ましくないので、このタイミングで一時人里に出て生活する、というしきたりを数代前の長が作った。
・ヤンをかどわかすシーンのタイミング
もしジルヴェスターが礼拝に行くのに間に合う時間帯にヤンが部屋を出なかったら、ルドルフに窓でも割らせて無理矢理動かす手筈。
どうせエーミールは連れ去るので、建物が多少無事でなくても問題はない。ちょっと制圧が手間になるだけ。
・ラルフ殺害現場からのヤンとルドルフの移動タイミング
本当にどうしようかと思った。
ヤンはほとんど瞬間移動できるが、「ルドルフの連絡がないとジルヴェスターが動けない」という前提を置くと、ルドルフが着く前にエーミールがヤンを逃がしてしまう、というジレンマがあったので。
逆に言うと「連絡を待たずに動く」ができればクリアだったので、ジルヴェスターには状況を見て見切り発車してもらった。
・結婚式の誓いの言葉
これは突然のルドルフの暴走で、こっちが何事かと思った。
本当は別に何でもよかったが、場所が場所で相手が相手だったので、急に妙なことを言い出すことへのカムフラージュを兼ねて更に突拍子もない台詞になった結果、結婚式の誓いの言葉になった。
・アルコール耐性
強い ヤン>>>>エーファ・ルドルフ>>エーミール>>ユーディット>>アロイス>>(超えられない壁)>>ジルヴェスター 弱い
ヤン:ただのザル、もしくはワク。ほとんど乱れない。いつまででも飲んでいられる。ウイスキーでも水同然。ただし経歴上、「ワインは嫌い」。文字通りのうわばみである。高い酒の味を覚えると破産するので、頼むから安酒で満足しておいてほしい。
エーファ:ヤンとの差が大きいが、実は人間にしてはめちゃくちゃ酒に強い部類の人種(別にそれは、「実は人狼だから」ということではなくて)。長い時間楽しく酔える。ほぼ乱れず潰れない。記憶も全部ある。
ルドルフ:実は相当強いが、過去の経歴から人前で酔うこと・酔っ払いと接すること自体に忌避感があり、ほぼ人前では呑まない。
エーミール:avenge時点ではまだ飲んだことがない。後日談であるhomecoming時点ではそれなりに飲む。比較的甘い酒を好む。ほぼ乱れないが、多分飲むと少し毒舌になる。
ユーディット:楽しく酔うが翌日あんまり覚えていない。
アロイス:別に潰れないのだが色々とコントロールを失うため、一度人前で飲んだときに大変なやらかし方をして、それ以来二度と人前では飲まない。
ジルヴェスター:一口でも飲んだら眠くなって、翌朝まで一切現実の記憶がない。
……ジルヴェスター、眼鏡を外されると何もできない(ように見える)のと言い、弱点が多いなあ……。
ところでこのアロイスがやらかしたときの話、だんだん詳細がわかってきたので多分あとでぽそっと書くと思います。間違いなく需要がないけど楽しいからいいよね。
※書きました→セルフ二次創作『酒は飲んでも飲まれるな/アロイスとエーファとジルヴェスターの場合』主に飲酒描写と事後描写、若干の同性愛要素注意。
・エーミールの射撃能力
二十五メートル先の栗鼠の頭部を一発貫通。
現代のスリングショットを検索すると、最大有効射程が十~二十メートル(水平でターゲットに当てる場合)とある。斜めで飛ばすだけなら百メートル出るものもあるらしいけど。しかもこれは樹脂とか使える現代のものであって、ゴムと木の古典的なスリングショットでは普通、この距離でこの精度、この威力にはならないはずだ。
……要するにこれはアーチャーとしての能力が異様に高い、という描写であって、ファンタジーだ。
この世界のリアリティレベルは「翼ある蛇やら人狼やらが出没するぐらい」なので、まあそれでもいいんじゃないかな、と思う。
因みに本当はこの段階で(というより、それよりはるか前から)、エーミールにはジルヴェスターを直接的に害せるだけの能力が十分すぎるほど備わっている。近距離戦だとやや神父に軍配が上がりそうだが、射撃戦なら間違いなく一撃必殺。自分には力がない、と思い込んでいるのは本人だけ(そもそも「スリングショットしか扱えない」が事実ではない。スリングショットは照準やら力加減やらを自前でやるんだから、少し練習時間さえ取れれば銃の方が簡単だろうと思う)
ただその思い込みがどこから来てるかというと、アロイスの死~エーファ倒れる~フランツに話を聞けずに終わる~窮乏して神父に頼らざるを得なくなる、という流れの中で無力感を味わってきたからなので、まあ是非もない。
・ユーディットが盗みたかったもの
私の目からは見えそうで見えなかったのでTwitterで騒いでしまったやつ。
なんかステンドグラスみたいなものが私の脳内には当初見えていたのだが、収束させたら翡翠の薔薇と紅縞瑪瑙のマリア像になった。
なおジルヴェスターは調度に金を掛けるタイプではないので(ただし執務室については、人を迎える部屋として最低限必要なところまでの費用は掛けている)、多分この二つはまあまあ出来がいいからどちらも貰い物だし、その並びにあるらしい「透明なガラス細工の、たてがみと尻尾が青い馬」も多分貰い物か、結構安価なものだろう。
・自分でもこれはわかりにくいなと思った伏線
エーミールを診に来たアントンがマスクをしてないのは「人間の病気にかからないから」だったりするが、まあ、「雑だから」と感じてもらっても支障はないのでどっちでもいい。ヤンが直前に同じことを述べているので、わかる人はここでアントンも人外のものとわかるかもしれない、くらい。
あと「めちゃくちゃわかりにくいやつだが意図的な描写」がもう一つあって、ヤンがパニクったときに、外に押すべき玄関の戸を内に引いて「開かない!」と絶望している。鍵がかかっているのでどっちみち開かないのだが(グロくて不採用になった喰いシーンでアントンが掛けていった)、あれは実は混乱の描写として書いた。
・ご飯
エーミールの作る作中ご飯があまり美味しそうでないのは仕様(切り詰めて生活してるし母親と自分のご飯を分けないので、ほとんどいつも「消化に良くて最低限の栄養があるもの」ということになっている)。例外はヤンをもてなしたときの鶏肉のグリルと、ヤンが獲ってきた鳩(鳩の方は多分、ほぐした身をエーファにも食べさせてるはず)。
……あ、あとソーセージとスクランブルエッグ。あのときはエーファの分を別に作ってる。
ジルヴェスター宅のご飯が描写されないのも仕様。エーミールが特に感想を持っていない(=特にそれまで自分が食べていたご飯と違うと思っていない)ことからお察しください。引き取られるより前にエーミールが屋敷に呼ばれてたときは、ご飯食べるんじゃなくてお茶してたんだと思う。ジルヴェスターは酒がだめなので、お茶とお茶菓子にだけはとても力が入っているのだ。……ただし正規の収入からね。
・間取り
書きながら、なんかジルヴェスターの家が学校みたいなつくりだなーと思ってたら、エピローグを書いてみたら本当に元学校だった件について。私もあの台詞にたどり着くまでは確信がなかったので「うぉおい」って言った。
エーミールやラルフの家は量産住宅なので間取りがほとんど共通だが、エーミールの家に関しては寝室から洗面所への壁を後から改築して、直通で洗面所と寝室を行き来できるスライド式のドアを設置している(具合がすごく悪くなる前のエーファは、一応助けがあれば移動できるので、トイレとかシャワーとかの時のために)。あとこっちの家はすぐ反対側に同じ間取りの家がもうひとつあるため、裏口がない。
水回りはかつて町が栄えていたときに整備されているが、ゴミはほぼ生ゴミしか出ないため大方は庭で堆肥にしている(紙ゴミは燃やすなり屑屋に売るなりしている)だろうと思われる。なおトイレは簡易水洗で汲み取り式。
・死人に口なし
あなたはオンライン長期人狼で、人からとっさに見えないくらい更新時間直前になにか意味のある発言をして、直後の更新で脱落したことがあるだろうか。あるいは、それを見たことがあるだろうか。
いわゆる「遺言」というやつだ。
これが思いの外、後に残るプレイヤーたちに結構な影響を残す。すごいでたらめな考察なのにそれに引っ張られたり、自分の考えの前提に置いてしまったりすることがあるのだ。恐ろしいことに「あれには何の意味もない」とちゃんと思っていてすらも影響されることがあるし、特にそれが、誰かを疑う発言だったりすると、後々すごい混乱のもとになる場合がある。
そんなわけで、ジルヴェスターが「二度とわかりあえない」と思ったり(死者の言葉は覆らない、が私の体感としては近いが、彼の目線からはこの言葉選びにはなり得ないと思う)、ケヴィンが「死者の言葉は生者を縛ります」と言ったりするのは、どちらかというと現実の「死人に口なし」という諺より、オンライン人狼の遺言が引き起こすあれこれを意図した、人狼二次創作としての要素だったりする。
多分これは本文でないところに書かないと伝わらないので、蛇足ながらここに記す。
・展開の変化
いつもいつも展開の先が本当に見えていないのだが、最初の段階でエピローグの光が全部見えていたら、本編の闇に本気を出すことはできなかったような気がする。ちょうど適切な時期になると先の扉の鍵が開く、そんなような経験を今回は何度もした。
具体的には、当初はヤンは最初の脱皮もしなかったし別にエーミールは熱を出さなかったし、ジルヴェスターには実の息子がいたしエーミールはヤンと喧嘩して(というかその場を離れさせるために敢えて罵って喧嘩別れして)いたし、それでも出ていく前に挨拶に来るのはヤンの方だったし、ただそれを受けて夜中に逃げるだけで毒も盛らなかったし、ユーディットはいなかったしルドルフはあんなに情が深くなかったし鉱山はまだ閉山していたし、エーミールの黒い炎はあんなに燃え盛っていなかったしアロイスのプランも存在しなかったし、もちろんアントンもいなかったし人狼も出なかったのだ。
……つまり当初のプロットは本当に後書きに書いた五十字ぐらいで、全ては書きながら流れの中に出てきた情報を受けて、あちこちのバランスを調整して構成したほぼ即興の造形だったりする。伏線を束ねて、うまく形になるように籠を編むみたいな作業だった。
だから正直、書いてるこっちも、こんなことになるとは夢にも思ってなかった。
・avenge
revengeじゃないんだよなあ。
この二つの単語の意味の違いは認識してるけど、まあエーミールの元々の意図が本当にavengeだったかどうかは置いといて、結果としてジルヴェスターの悪事が暴かれて町も救われているので、これでもいいんじゃないかと思う。
なお、ここから先は蛇足です。これがここまでに正しく伝わっていないなら、それは私の筆力の敗北だ。
……実のところエーミールは父の仇を討とうとしたのでもなく、母の仇を討とうとしたのでもない。彼はただ自分が奪われたものについて怒った。父を亡くして自分が失った平穏や幸福について怒り、死に向かう母を前にして何もできずに自分が味わった無力感と後悔について怒った。何しろアロイスに育てられたエーミールの自己肯定感の高さは半端ではないので、その怒りは決して立ち消えることがなかった。
ただそれは一人の身の内に抱え込むには大きすぎる、自分をも燃やし尽くしてしまいそうな怒りだったけれど、ヤンという助けを得て、とうとう彼は復讐することができた。そして自分のために心の底から怒り、ちょうどバランスの取れるくらいの過不足のない仕返しができたことで満ち足りて、彼の中には何の傷も残らなかったし、だから彼は結局、その後の世界にも何の傷も残さなかった。
まあたぶんこれは、そんなような話。
……だ、と、avengeを書き終わったときは思っていた。homecomingを書きながらまた別の感慨を抱いている。まあ、そんなもんですよね。