avenge
7-8.
夜が来て、朝が来て、昼が来た。採ってきた葉も蔓も花も飾らず、不自然に大きく途切れがちになっていく呼吸をほとんどずっと聞いていた。
今となっては何も自分にできることはなかったが、苦しくもなかった。既に覚悟は決まっていた。
──ヤンは間に合わないだろう。その賭けは、半々よりもはるかに分が悪かった。その上たとえ間に合ったところで、以前と同じ薬が同じように効く保証などもはやない。
優しい彼を騙すことになったのは心苦しかったが、自分と母のために走ってくれたことが嬉しかった。
彼を見つけたその日から今日まで、どれほど彼の存在に救われてきたことか。本当に美しいもの、輝かしいもの。出会ったときは傷つけられていたけれど、今ならきっともう、彼は一人でどこにでも行ける。
……間に合わなかったと知っても、きっと彼は怒らないだろう。
もしかすると泣いてくれるだろうか。そうだったらいい。きっと自分は泣けない。せめて母を送る涙を彼が零してくれたなら、母への手向けになるだろう。
だが、甘えていいのはそこまでだ。
苦しげにかすかに身をよじる母の手を取った。口を大きく開いて繰り返される、喘ぐような呼吸を聞いた。
「……ごめんね、母さん。何もできなくて」
もう応えてはくれないのはわかっている。聞こえてはいるのだろうか。どのみち何を言っても自己満足だ。
さすっていた手が少しずつ冷たくなって、少しずつ呼吸がゆっくりになって。
ひとつ、息を吸って。
「……ああ、──、」
「!」
はっと顔を上げて母の顔の向いた先を見る。何もない。けれど確かに今息を吸ったとき、母は微かに父の名を呼んだと思った。
そしてそれを最後にもう、その胸が動くことはなく。
父が母を迎えに来た、と思った瞬間、固めたはずの覚悟が一瞬で崩れた。
「父さ……っ、お願い、僕も、僕も連れて行って……!」
泣かないはずだと思ったのに急に視界がぼやけて、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「何もできなくてごめん、母さんを助けられなくてごめん、謝るから、何でもするから、お願い、僕も……!」
ベッドに頭を擦りつけて懇願する。涙が止まらない。とても耐えられない。子供のように泣きじゃくっている自分の声を遠くで聞いた。
やがて熱い瞼の裏の真っ暗な世界に優しく温かな光が訪れて、ついに自分を、